【ここまでのあらすじ】
フランス、マルセイユに住む4人の幼馴染、レオ、サミア、ダヴィッド、ジェスは、1700万ユーロ(約28億円)の宝くじに当選する。
しかし、未成年である彼らは賞金を受け取れず、様々なトラブルに巻き込まれていく。
そして、彼らの秘密を知る謎の脅迫者「カラス」の影が、固い絆で結ばれたはずの4人の友情に、静かに亀裂を生み出していくのだった…。
明かされる裏切り者の正体と、そのあまりに人間的な動機
友情が崩壊寸前にまで追い詰められたその時、ついに脅迫者の正体が明らかになります。
その人物は、サミアの恋人、ポールでした。
彼の動機は、金そのものではなく、自分だけのけ者にされたことによる「嫉妬」と「疎外感」、そして大金を使ってサミアの心を取り戻したいという、歪んだ感情でした。
逆転劇!ヴィクトワールの華麗なるカウンタープラン
絶体絶命のピンチに陥る4人を救ったのは、18歳の同級生ヴィクトワールでした。
彼女は、仲間を裏切るフリをしてポールに近づき、彼が脅迫の証拠(4人が病院でやった悪事の映像)が入ったハードディスクを隠す瞬間を見計らい、仲間たちとそれを偽物とすり替える、という大胆かつ緻密な逆転劇を計画。
クライマックスのパーティー会場で、ポールは4人の悪事を暴露しようとしますが、すり替えられた偽の証拠を再生してしまい、彼の計画は公衆の面前で完全に失敗に終わりました。
大金の行方と、新たな始まりを告げるラストシーン
物語には、まだ続きがありました。
実は、ポールが盗んだと思っていた大金は、パナマの会社の株式に姿を変えており、その価値はわずか8,000ユーロだったというオチがつきます。
一方で、意識を取り戻した教師に口封じとして200万ユーロを支払うことになりました。
ラストシーンは、マルセイユの美しいビーチ。
全ての嵐が過ぎ去り、4人とヴィクトワールは、静かな時間を過ごしています。
しかし、ダヴィッドが「最高のアイデアがあるんだ」と、新たな波乱を予感させる一言を口にしたところで、物語は幕を閉じます。
🔴Netflixドラマ『ヤング・ミリオネアズ』【深掘り考察】この物語が伝えたかったこととは?(ネタバレあり)
深掘り考察①:大金は「友情の増幅器」だった
よく「大金は友情を壊す」って言うけど、このドラマを観て、僕はちょっと違う感想を持ちました。
あの28億円は、彼らの友情を「破壊」したんじゃない。
もともと彼らが持っていた性格や、関係性の良いところも悪いところも、全部「増幅」させただけなんじゃないかなって思う。
金は彼らを変えたんじゃなく、彼らがもともと「どんな人間だったのか」を、僕らにハッキリと見せてくれた。
そして、彼らの友情は、最終的には崩壊しなかった。
ひび割れ、きしみながらも、なんとか持ちこたえた。
それは、彼らの友情が、この巨大なプレッシャーに耐えられるだけの強さを持っていたってことなんだと思います。
あんな風な友達がいるとしたら一生大事にしていかないといけないよね。
深掘り考察②:本当の主人公は、ヴィクトワールだった?
この物語の中心は、もちろん4人の幼馴染。
でも、全エピソードを観終えた今、僕はあえてこう言いたいです。
このドラマの「真の主人公」は、ヴィクトワールだったんじゃないか、と。
4人がカオスに翻弄され続ける中で、ヴィクトワールだけは、物語を解決へと導くために、冷静に、そして大胆に行動していましたよね。
感情の中心が4人組にあるとすれば、物語を前に進めるエンジンの役割を果たしたのは、間違いなく彼女。
彼女の勝利は、友人たちを救っただけでなく、世の中のすべての「しっかり者」たちへの、静かなエールのように僕には感じられました。
深掘り考察③:「大人になれない子供たち」の、ちょっと笑えて、すごくリアルな物語
このドラマの本質をひと言で表すなら、「子供の心を持ったまま、大人の力を手に入れてしまった者たちの、滑稽でリアルな物語」かな。
彼らが大金を手にしてやることなすこと、すべてが未熟で、計画性がない。
大人のルールで動く危険なゲームを、子供のルールのまま戦おうとしている。
そのチグハグさが、このドラマのブラックコメディとしての面白さと、背筋が凍るような恐怖を生み出しているんですよね。
大金は、彼らにとって、自由の翼であると同時に、大人になる機会を奪ってしまった「呪い」でもあったのかもしれません。
特にダヴィッドは、決まって一番にいい考えがあると、行動を提案するけど、彼の提案で成功した試しが一度も無かったし、彼が一番子供のまま、大金を手にしたことで大人になれずに苦戦したキャラクターに見えた。
深掘り考察④:監督が仕掛けた「カオス」の本当の意味
このドラマの監督イゴール・ゴーツマンさんは、「カオス」を描く達人だと思います。
彼が描くカオスは、単なるドタバタ劇じゃない。
それは、社会のルールや建前といった鎧をすべて剥ぎ取り、人間のむき出しの本性を観察するための、「実験室」みたいなものなんです。
宝くじの当選は、この4人の若者を、日常というレールから強制的に脱線させるための起爆装置。
そして、その実験室では、最も道徳的な人間ではなく、最もその無茶苦茶な環境に適応した人間が生き残る。
監督が仕掛けた「カオス」とは、そんな人間観察を行うための、冷徹で、しかし最高に面白い舞台装置だったんですね。
🔴シーズン2続編は?ラストシーンが示す、ビターな未来予想図!
さて、最後に気になるのは、彼らの未来と、シーズン2の可能性ですよね。
あの思わせぶりなラストシーンを見ると、続編を期待したくなるのがファンの心理。
でも、僕の結論は、「続編はない」です。
そして、あってはならないのかもしれない。
なぜなら、あのラストシーンで、ダヴィッドが「最高のアイデアがあるんだ」と言った瞬間、僕には彼らの未来が見えてしまったから。
思い出してみてください。
この物語の中で、ダヴィデは決まって一番に「いい考えがある」と行動を提案しますが、彼の提案で成功した試しは一度もありませんでした。
彼は、この壮絶な事件を経てもなお、全く成長していない。
大金を手にしたことで、むしろ大人になる機会を永遠に失ってしまった、最も哀れなキャラクターに見えました。
だから、彼の「最高のアイデア」は、きっとまた、計画性がなく、未熟で、とんでもないトラブルを引き起こすはず。
ラストシーンは、希望に満ちた「新たな冒険の始まり」なんかじゃない。
彼らが、これからも同じ過ちを繰り返し、大金という呪いに縛られ続けるであろうことを示唆する、あまりにもビターで、皮肉なエンディングだったんだと、僕は思います。
僕らはもう、彼らの次の失敗を見なくてもいいのかもしれませんね。
🔴Netflixドラマ『ヤング・ミリオネアズ』まとめ
『ヤング・ミリオネアズ』は、単なる夏の新作ドラマではありませんでした。
これは、友情、欲望、そして若さそのものの危うさを描いた、忘れられない旅。
「もし、何の制約もなくなったら、君は本当はどんな人間なんだい?」
このドラマは、そんな痛烈な問いを僕らに投げかけてくる、現代の寓話なんだと思います。
ラストシーンで示唆されたように、彼らはきっとこの先も、同じ過ちを繰り返してしまう可能性があります。
そう考えると、ただ面白いだけじゃない、人間の本質に迫るような、少しだけ苦い後味が残りました。
でも、だからこそ、この作品は観る価値がある。
あなたなら、どうしますか?
観終わった後、きっと誰かと語り合いたくなるはずですよ。