息をのむほど美しい、神々の庭。
しかし、その大地には、決して癒えることのない「傷跡」が刻まれていた——。
この夏、Netflixが放つ新たな傑作の予感。
それが、エリック・バナ主演の新作ミステリースリラーシリーズ『大地の傷跡』（原題: Untamed）だ。
舞台は、世界遺産ヨセミテ国立公園。
この雄大な自然の中で、一つの残忍な事件が、一人の男の封印された過去と、大地に刻まれた深い闇を暴き出す。
こんにちは！
Netflixの新作は欠かさずチェックする僕YOSHIKIが、この注目作の魅力を、【ネタバレなし】と【ネタバレあり】に分けて徹底的に語り尽くします！
この壮大な闇に、あなたは耐えられるか？
まずはサクッと基本情報から。
これだけ押さえておけばOK！
脚本が『レヴェナント：蘇えりし者』のマーク・L・スミスってだけで、生半可な物語じゃないことがわかるよね。
ここでは、予告編やあらすじ、制作者のインタビューから、僕が「これはヤバい！」と確信した3つのポイントを紹介していくよー！
このドラマのもう一人の主人公は、間違いなく「ヨセミテ国立公園」そのものだ。
息をのむほど美しい観光地。
でも、その名前の由来が、先住民の言葉で「彼らは殺し屋だ」を意味する、っていう説があるのを知ってた？
本作は、その美しい顔の裏に隠された、神話的かつ現実的な「死の気配」を巧みに織り込んでくる。
ヨセミテは、単なる美しいロケーションじゃない。
物語の根幹をなす、恐ろしく、そして抗うことのできない巨大な存在として、僕らの前に立ちはだってくれる事を期待したい。
脚本家は、制作にあたり「安易な解決策や現代的なツールをすべて取り除く」ことを意識した、と語っている。
これはつまり、都合の良いDNA鑑定や、天才的なハッキングで事件が解決したりはしないってこと。
登場人物たちの地道な捜査、直感、そして肉体的な奮闘によって、物語は進んでいくはず。
この「ノー・チート」哲学によって、謎解きのプロセスはより原始的で、ヒリヒリするような緊張感に満ちたものになるはず。
重厚で骨太なクライムスリラー好きには、たまらないはずです。
この重厚な物語を支えるのが、主演のエリック・バナと、名優サム・ニールという、確かな実力を持つ俳優陣。
特にエリック・バナは、近年『渇きと偽り』でも、雄大な自然を舞台にしたスリラーで素晴らしい演技を見せていただけに、本作の「過去に傷を負った捜査官」という役どころは、まさに適役。
彼らが演じるキャラクターたちの、複雑に絡み合う人間関係。
雄大な自然の中で繰り広げられる、魂と魂のぶつかり合い。
これぞ、僕らが観たかった本物のドラマって感じになる事を期待している。
ヨセミテ国立公園の象徴、絶壁エル・キャピタンから一人の女性が転落死した。
当初は悲劇的な事故と思われたが、国立公園局の特別捜査官カイル・ターナーが捜査を開始すると、その死には残忍な殺人の痕跡が浮かび上がる。新人レンジャーのナヤをパートナーに、広大な公園の捜査に乗り出すカイル。
しかし、これは単独の事件ではなかった。
公園の暗がりに潜む、連続殺人鬼の犯行である可能性が濃厚になっていく。犯人は、ヨセミテの地理と自然を熟知した、恐るべき存在。
カイルにとってこの捜査は、犯人を追うと同時に、この地で起きた自らの忌まわしい過去の記憶と向き合う、苦痛に満ちた旅路となるのであった…。
観たぜ、『大地の傷跡』！
主演エリック・バナ、舞台はヨセミテ国立公園。
この布陣だけで、期待値はMAXでした。
ただ、正直に言おう。
これは手放しで絶賛できる傑作… とは、ならなかったです。
序盤の掴みは最高でした。
息をのむような映像と、主人公が抱える闇。
一気に世界観に引きずり込まれる。
でも、物語が進むにつれて「あれ？」って思うことが増えてくる。
主人公の過去、麻薬組織の話、そして殺人事件っていう３つの要素が、それぞれ独立してて、なかなか一つにまとまらない。
だから、物語全体がゴチャゴチャして、どちらかと言うと「小難しい」印象を受ける。
そのせいで、どうしても中盤はダレて感じてしまう。
そして、バラバラだった話が最後に一応は繋がるんだけど、その結末も「なるほど」止まりで、スッキリするようなカタルシスは正直少なかった。
じゃあ、何がこのドラマを支えているのか？
言うまでもなく、主演エリック・バナの魂の演技と、息をのむヨセミテの映像美。
この二つが、物語の構造的な弱さを補って、余りあるほどの魅力と見応えを生み出している。
つまり、物語の細部に目をつぶってでも観る価値があるか？
と聞かれれば、答えは「イエス」。
完璧なミステリーではない。
だが、完璧な演技と映像がここにある。
それこそが『大地の傷跡』の揺るぎない魅力かもしれないね。
物語の最終盤で明かされる、冒頭の転落死事件の真犯人。
それは、主人公カイルが長年友として、父親のように信頼してきた公園のレンジャー長、ポール・サウターだった。
そして、被害者のルーシー・クックは、ポールが過去に捨てた実の娘。
ヨセミテに戻ってきたルーシーが、ポールの現在の家族に自らの存在を暴露すると脅し、金を要求し始めたことに恐怖を感じたポールは、彼女を黙らせるために銃を持って追いかけた。
彼は「殺意はなかった」と告白する。
しかし、撃たれたルーシーは崖から転落死。
長年の嘘と保身が生んだ、取り返しのつかない悲劇だった。
全ての真相をカイルに告白した後、ポールはカイルの目の前で銃で自らの命を絶った。
ルーシー殺害の犯人ではなかったが、野生動物管理官のシェーン・マグワイアは、公園内で麻薬密売組織を運営する危険人物だった。
彼は捜査の過程で邪魔な人間を次々と殺害し、最後はカイルの命も狙う。
森の中での壮絶な追跡劇の末、シェーンは駆けつけたパートナーのヴァスケスによって射殺され、公園の暗部の一つは浄化された。
そして、物語を通してカイルを苦しめていた未解決事件、「サンダーソン事件」の真相。
カイルの息子ケイレブを誘拐・殺害した犯人サンダーソンは、法で裁かれることなく行方不明となっていた。
その真相は、カイルの元妻ジルが、息子の復讐のためにシェーンを密かに雇い、サンダーソンを殺害させていたというものだった。
カイルはこの事実を犯行後に知りながら、愛するジルを守るために事件の真相を隠蔽し、「共犯者」となっていた。
この重い秘密こそが、二人の夫婦関係を決定的に破壊した根本原因だったんだと思う。
●カイル・ターナー
全ての事件を解決し、ジルとも和解。過去の亡霊から解放され、自らの癒しのためにヨセミテを去ることを決意する。
●ナヤ・ヴァスケス
都会の常識が通用しないヨセミテで成長を遂げ、カイルの意志を継ぐ新たな「番人」となる。
このドラマの原題『Untamed』は、ヨセミテの「手つかずの自然」だけじゃない。
それは、登場人物たちの心の中に巣食う、理屈や社会のルールでは到底「飼いならすことのできない感情」そのもののメタファーなのかなって感じた。
カイルの「飼いならせない悲しみ」、ジルの「飼いならせない復讐心」、そしてポールの「飼いならせない恐怖」。
一見バラバラに見える事件が、実はこの三人の制御不能な感情を起点として全て繋がっていた。
この物語の構造そのものが、「一つの罪は、連鎖し、共同体の地下水脈を汚染していく」というテーマを体現してたかったのかもしれない。
そんな風にこじつけて考えてみたけど、驚くようなラスト展開にはならずがっかり感もあった。
本作は「家族を守るために、人はどこまで踏み込めるのか」という重い問いを、3人のキャラクターを通して執拗に突きつけるのかもしれない。
「現在の家族」を守るために、過去の娘を「捨てた」ポール。
亡き息子を守るために、法を逸脱して「罪を犯した」ジル。
そして、元妻ジルを守るために、真実を隠蔽し「嘘をついた」カイル。
特に、息子を悼み続ける「嘆きの父」カイルが、娘を否定し続けた「拒絶の父」ポールを断罪するというクライマックスの構図は、あまりにも皮肉で、悲劇的だったよね。
カイルの物語は、犯人探しのミステリーであると同時に、一人の男が深いトラウマから再生するまでの癒しの物語でもある。
彼が最後に下した決断――愛馬をヴァスケスに託し、ヨセミテを去ること――は、決して現実からの逃避じゃない。
それは、悲しみの記憶が染みついたこの土地から自らを解き放ち、未来へ向かうための前向きな「解放」であり、「新たな始まり」だったのだと思う。
彼はようやく、本当の意味での「癒しの旅」を始める準備が整ったんだよね。
この、あまりにもダークで重い物語の中で、唯一の希望として描かれていたのが、新人レンジャーのナヤ・ヴァスケスでした。
彼女は、都会の常識とヨセミテの掟の間で葛藤しながらも、著しい成長を遂げる。
カイルが去り際に彼女に馬を託す象徴的なシーンは、単なる友情の証じゃないように感じた。
それは、ヨセミテの「番人」としての役割の継承を意味するのかもしれない。
過去の闇に囚われた男たちが去り、未来を見据えた健全な守護者として、ヴァスケスがこの地の平和を守っていく。
物語は、彼女の存在に一条の希望を見出して幕を閉じる。
『大地の傷跡』は、完璧なミステリーではないかもしれない。
でも、人間の弱さ、罪、そして癒しという普遍的で重いテーマを、一流のキャストによる魂の演技と、観る者を圧倒する大自然の映像を通して描き切った、重厚な「キャラクタードラマ」としては、観る者の心に深く、そして長く刻まれる力を持っている。
エリック・バナのファン、そして骨太な人間ドラマをじっくりと味わいたい視聴者にとっては、間違いなく観る価値のある忘れ難い一作だと思います。