🔴映画『木曜殺人クラブ』【深掘り考察】この物語が伝えたかったこととは?(ネタバレあり)
深掘り考察①:「正義」の多面性 — 4つの殺人に込められた倫理的問いかけ
この映画は、「犯人は誰か?」ということ以上に、「正義とは何か?」を僕らに問いかけていように感じました。
劇中で描かれる4人の殺人者(ピーター、ペニー、ボグダン、ジョン)は、それぞれが全く違う倫理観に基づいた「正義」のために、罪を犯しています。
まず、ペニーの正義。
これは、法制度が機能しなかったときに個人が下す「私的制裁」です。
彼女は、有罪だと確信した男が法の網をすり抜けることを許さず、自らが裁判官であり、死刑執行人となりました。
次に、ボグダンの正義。
彼の殺人は、搾取に対する必死の「自己防衛」であり、家族に会いたいという切実な願いから生まれた、悲しい抵抗でした。
そして、ジョンの正義。
これは「愛と保護」のための犯罪です。
彼の動機に個人的な利益は一切なく、ただひたすらに愛する妻の名誉と尊厳を守るためでした。
そして最後に、最も重要なのがエリザベスの「正義」です。
彼女は誰も殺しません。
でも、ジョンの最後の願いを聞き入れた彼女の選択は、この物語の結論を示していると思う。
彼女は、冷徹な「法」と、人間の「情」を天秤にかけ、後者を選んだ。
ルールをただ適用するんじゃなく、個々の状況や人間性を深く理解することこそが真の正義であるという、木曜殺人クラブの哲学そのものだったのかもしれない。
深掘り考察②:原作を調べて衝撃!ボグダンの運命は、全く違っていた
この映画を観終わった後、僕、どうしても気になって原作小説について調べてみたんです。
そしたら、とんでもない事実が分かって、本当に衝撃を受けました。
映画では、ポーランド人労働者のボグダンは、自己防衛の末に殺人を犯してしまい、最終的には逮捕されますよね。
でも、原作小説では、なんと、彼の殺人は秘密にされ、逮捕されないらしいんです!
それどころか、続編では木曜殺人クラブの頼れる協力者として、ファンに愛される重要キャラクターへと成長していく…らしい。
じゃあ、なぜ映画では彼を「逮捕」させたのか?
僕が思うに、それは映画版の彼が、原作の「冷徹な復讐者」から、より同情的な「偶発的な自己防衛者」へと変更されたからだと思う。
これほど同情的なキャラクターが、殺人の罪から完全に逃れるという結末は、幅広い観客が観る映画としては、少し受け入れられにくい。
だから、映画は分かりやすい「法的正義」で着地させる必要があった。
この決断は、一本の映画としての収まりは良くしたけど、もし続編が作られるなら、物語の大きな足かせになるかもしれない。
原作ファンがこの変更をどう思ったのか、すごく気になりますねーー。
深掘り考察③:「コージー・クライム」って、知ってる?この映画が持つ、不思議な魅力の正体
この映画を観ていて、僕、ずっと不思議だったんです。
扱っているのは殺人事件だし、エリザベスの夫が抱える認知症とか、ジョンとペニーの最期とか、テーマはめちゃくちゃ重い。
なのに、なんでこんなに温かくて、クスッと笑えるんだろう?って。
それで、観終わった後に色々調べてみたら、ぴったりの言葉を見つけました。
それが、「コージー・クライム」っていうジャンルらしいんです。
「コージー」ってのは「居心地が良い」って意味で、要するに「血なまぐさい描写や、過度な暴力を避けた、心地よい謎解きミステリー」のことらしい。
まさに、この『木曜殺人クラブ』のことじゃないですか!
美しい老人ホームを舞台に、チャーミングなお年寄りたちが、紅茶でも飲みながら謎を解いていく。
この映画の魅力は、まさにこの「コージー」さにあったんだなって、すごく納得しました。
でも、ただ優しいだけじゃないのが、この映画のすごいところ。
この「居心地の良さ」を入り口にすることで、僕らが普段は目を背けがちな「老い」や「死」といった、少し重いテーマについても、自然と考えるきっかけをくれるんです。
その絶妙なバランス感覚こそが、『木曜殺人クラブ』を単なる面白いミステリー以上の、忘れられない特別な作品にしているんだと思います。
深掘り考察④:エリザベスの「選択」— 法を超えた共感が示す物語の核心
最後に、この物語の真の主人公であるエリザベスの、あの最後の「選択」について、もう少しだけ深く考えてみたいと思います。
元スパイである彼女は、現実主義者で、知的で、そして常に道徳的なグレーゾーンで生きてきた人物です。
彼女がジョンとペニーに対して下した決断は、彼女というキャラクターの集大成であり、この物語が本当に伝えたかった、核心的なメッセージそのものだと僕は感じました。
あのホスピスの一室で、エリザベスは二つの正義を天秤にかけました。
一つは、どんな事情があろうと殺人は罪であり、犯人は法で裁かれなければならない、という冷徹で公平な「法の正義」。
もう一つは、ある男が死にゆく妻へ捧げた、最後の愛と尊厳を守ってやりたいという、極めて個人的で人間的な「情の正義」です。
そして彼女は、後者を選んだ。
彼女が浮かべた、あの静かな微笑みは、もちろん殺人を肯定するものではありません。
それは、法制度という大きな枠組みでは到底裁ききれない、複雑な人間の悲劇に対する、深い理解と共感の表明なんだと思う。
それはまた、この映画、そして木曜殺人クラブの哲学—「ただパズルを解くだけじゃなく、その裏にある人間を理解することが重要なんだ」—を、静かに肯定するものでした。
真の知恵とは、特に人生の黄昏時においては、ルールや規則を超えて、人間の心の乱雑で、悲劇的で、そして愛情に満ちた複雑さを見抜く能力にあるのだと、彼女は僕らに教えてくれた気がします。
🔴映画『木曜殺人クラブ』続編は?クーパーズ・チェイスの未来
Netflixはまだ正式に発表していませんが、続編が製作される可能性は極めて高いと思う!
原作ストックは豊富にあり、キャストや監督も続投に意欲的らしいからです。
もし続編が作られるなら、原作シリーズ第2作『二度死んだ男』がベースになる可能性が濃厚。
エリザベスのスパイ時代の元同僚が現れ、盗まれたダイヤモンドとマフィアが絡む、よりスケールの大きな事件にクラブが巻き込まれていく物語です。
ただ、映画で逮捕されてしまったボグダンがどうなるのか…。
脚本家がこの難問に見事な解決策を見つけてくれることを、期待して待ちましょう!
🔴映画『木曜殺人クラブ』【まとめ】最高の「癒し」を求めるあなたへ
『木曜殺人クラブ』は、鋭く斬新なスリラーを求める人には、少し物足りないかもしれません。
でも、純粋に楽しく、ウィットに富み、スターの魅力に溢れた、2時間の気楽なエンターテイメントを求めているなら、これ以上の作品はないと思う。
ミステリーの結末は忘れてしまうかもしれないけど、この愉快な4人組と過ごした時間は、きっと忘れられないものになるはず。
日曜の夜に、温かい紅茶でも飲みながら観るのに最適な、最高の心を癒す映画でした!