『ブラック・ミラー』シリーズといえば、ダークで皮肉な後味の作品が多い印象ですが、この第5話「ユーロジー」は、予想を裏切る深い感動を与えてくれる、非常に心に残るエピソードでした。
シリーズの中でも特に温かみがあり、見終わった後に優しい気持ちになれる、そんな一作です。
物語の中心となるのは、「ユーロジー」と呼ばれる、写真を通じて過去の記憶を追体験できる技術。
主人公は、過去に後悔や過ちを抱えたまま、この技術を使うことになります。
自分の記憶を頼りに、かつての出来事や人間関係を再訪していく過程は、時に痛みを伴いますが、人が過去とどう向き合い、現在、そして未来へと繋げていくのかという普遍的なテーマを丁寧に描いている印象。
特に感動的だったのは、主人公が避けたい過去や自身の不完全さと向き合いながらも、少しずつ変化していく姿です。
記憶の中での出来事や、彼を導く不思議なAIガイドとの対話を通して、彼は忘れていた大切なものや、見落としていた真実に気づかされていきます。
その過程は決して平坦ではありませんが、だからこそ、彼が最後にたどり着く境地や、示す行動に胸を打たれました。
このエピソードは、テクノロジーが必ずしも人間性を脅かすだけでなく、時として僕たちが過去を受け入れ、他者との繋がりを再確認し、未来へ向かうための小さな一歩を踏み出すきっかけを与えてくれる可能性も現わしているように感じます。
切なさの中にも確かな希望の光が見える、深く、そして温かい感動を味わえる素晴らしい物語でした。
この「ユーロジー」は、『ブラック・ミラー』シリーズの中でも特に感情に訴えかける、ほろ苦くも温かい物語でした。
テクノロジーが介在することで、過去の記憶や後悔との向き合い方が、よりパーソナルで、時に残酷に、しかし最終的にはある種の救いをもたらす形で描かれていてお気に入りのエピソードになりました。
主人公フィリップが、気乗りしないまま始めた「ユーロジー」体験。
それが、単なる追悼文作成の手伝いではなく、自らの過ちと向き合い、知らなかった真実に触れ、そして会うことのなかった娘(のAI)と対話するという、彼の人生にとって極めて重要な旅になる展開は見事でした。
過去の記憶が、彼の言葉によって徐々に鮮明になっていく描写は、記憶の主観性や曖昧さを巧みに表現していると思った。
そして、AIガイドがケリーの複製だと知った時の衝撃と、その後の対話の切なさ。
フィリップが自身の嫉妬や裏切り、誤解といった「見たくない過去」から目を背けられなくなる過程は痛々しいですが、それがあったからこそ、最後のチェロ曲の発見とケリーへの提供という行動が、感動させてくれました。
言葉ではなく、音楽という形で捧げられた「ユーロジー」。
それは完全な贖罪ではないかもしれませんが、過去と未来を繋ぐ、ささやかで美しい和解の形として心に残りました。
『ブラック・ミラー』らしい皮肉(チュートリアルを飛ばしたことなど)も効かせつつ、シリーズとしては珍しく、明確な希望やカタルシスを感じさせてくれる結末だったと思います。
チェロの楽譜をケリーに送ったフィリップ。
彼の人生はこれからどうなるのでしょうか?
「ユーロジー」は、テクノロジーが人間の最もデリケートな部分である「記憶」や「感情」にどう関わっていくのかを、切なくも温かい視点で描いた作品でした。
『ブラック・ミラー』が必ずしも暗い未来ばかりを描くわけではないことを示し、観る者に深い感動と、過去との向き合い方について考えるきっかけを与えてくれるエピソードでした。