「トゥーマッチ」——うるさすぎる、感情的すぎる、求めすぎる。
『GIRLS/ガールズ』で一世代の心を鷲掴みにした、あのレナ・ダナムの待望の復帰作。
彼女が次に描くのは、傷だらけの男女が繰り広げる、痛くて、厄介で、でもどうしようもなく愛おしい、国境を越えたラブストーリー(?)。
この記事では【ネタバレなし】と【ネタバレあり】で、あなたの期待感をMAXまで高めていきますよ!

こんにちは!
Netflixの新作は欠かさずチェックする僕が、この注目作、『イカれてる⁈』(Too Much) のヤバさを語り尽くします!
🎬 Netflixドラマ『イカれてる⁈』基本情報!

まずはサクッと基本情報から。
これだけ押さえておけばOK!
クリエイターがあのレナ・ダナム!
『GIRLS』好きとしては、期待しないわけにはいかない!
① 設定がリアルで痛い!「トゥーマッチ」な二人の衝突
この物語の主人公は、二人とも、めちゃくちゃ「普通」じゃない(笑)。
失恋の痛手から逃げるようにニューヨークを飛び出した、感情過多なジェシカ。
そして、彼女が出会うのは、「歩く危険信号」と称される、心を閉ざしたロンドンのミュージシャン、フェリックス。
本作の問いは、「二人は恋に落ちるのか?」じゃない。
「それぞれが抱えるトラウマが、二人の愛を許すのか?」という、もっとずっと切実なものなんだ。
完璧な人間なんていない。
傷だらけで、面倒で、どうしようもない僕らが、それでも誰かと繋がりたいと願う。
その痛々しくて、リアルな姿を描いているからこそ、この物語は僕らの心に突き刺さるんだ。
② レナ・ダナムの帰還!これぞ私たちが待っていた会話劇
やっぱり、レナ・ダナムの脚本は唯一無二。
本作でも、ウィットに富んでいて、核心を突き、時にナイフのように鋭い会話劇が全編にわたって炸裂している。
登場人物たちの、どうしようもなく人間臭いやり取り。
気まずい沈黙。
そして、思わず吹き出してしまうような、ブラックでシュールなユーモア。
『GIRLS』で僕らが夢中になった、あのヒリヒリするような感覚が、より成熟した形で帰ってきた。
それだけでも、観る価値は十分にある!
③『ノッティングヒルの恋人』への、残酷なアンサー
これ、気づいた時ちょっと震えたんだけど、本作の制作会社、あの『ノッティングヒルの恋人』を手掛けたワーキング・タイトルなんだよね。
アメリカから来た女性と、イギリスに住む男性の恋。
構図は同じ。
でも、描かれるものは真逆なんです。
『ノッティングヒルの恋人』が、夢のようなおとぎ話だったとしたら、『イカれてる⁈』は、ザラザラした手触りの、痛みを伴う現実そのもの。
運命の出会いは火事と病院行きで終わり、ロマンチックなはずのディナーは殴り合いの喧嘩に発展する。
これは、ただの現代版ラブコメじゃない。
「ロマンティックコメディという幻想を、ぶっ壊しに来た」とでも言うべき、レナ・ダナムの挑戦状だと思う。
👥Netflixドラマ『イカれてる⁈』キャストとあらすじ
●ジェシカ(演:メーガン・スタルタール)
ニューヨーク在住の35歳。
7年付き合った恋人との最悪な破局をきっかけに、全てを捨ててロンドンへ。
感情表現が豊かすぎる、「トゥーマッチ」な女性。
●フェリックス(演:ウィル・シャープ)
ロンドン在住のミュージシャン。
過去のトラウマから、他人と深く関わることを極端に恐れる「歩く危険信号」。
Netflixドラマ『イカれてる⁈』【ネタバレなし あらすじ】
ニューヨークで働くジェシカは、長年の恋人から一方的に別れを告げられた上、彼がインフルエンサーと婚約したことをSNSで知る。
心を打ち砕かれた彼女は、仕事にかこつけて、過去の全てから逃げるようにロンドンへと飛び立った。しかし、移住先で彼女が出会ったのは、フェリックスという、一筋縄ではいかない男。
彼は、過去のトラウマから心を固く閉ざし、誰とも深い関係を築こうとしない、まさに「歩く危険信号」だった。感情が豊かすぎるアメリカ人女性と、感情を殺したイギリス人男性。
最悪な出会いから始まった二人の関係は、互いの傷に触れ、反発し合いながらも、どうしようもなく惹かれ合っていく。果たして、彼らの「トゥーマッチ」な心は、互いを癒すのか、それとも、さらに深く傷つけ合うことになるのか…?
🤔 Netflixシリーズ『イカれてる⁈』【ネタバレなし感想】正直レビュー&評価!
全体総評:才能の無駄遣い?期待が大きすぎた「アンチ・ラブコメ」
『GIRLS』のレナ・ダナムの新作、しかもロマコメの定石を破壊するような「アンチ・ラブコメ」。
期待しない方が無理だった。
でも、観終わった僕の心に残ったのは、高揚感よりも、むしろ戸惑いと、少しの徒労感だった。
確かに、ダナム節は健在でした。
ウィットに富んだセリフ回しや、人間の厄介さをえぐり出すようなシーンには、何度も唸らされたし。
でも、物語の核であるはずのジェシカとフェリックス、この二人の関係に、僕は最後まで「愛」を見出すことができなかった。
海外の視聴者レビューで「ケミストリーがない」「見てて辛い」という意見があったけど、残念ながら僕はそっち側でした。
主人公ジェシカの「トゥーマッチ」な行動は、共感を通り越して、時として不快にさえ感じてしまう。
そして、そんな彼女にフェリックスが惹かれていく過程に、どうしても説得力を感じられなかったんだ。
「それこそが、このドラマの狙いなんだよ」と言われれば、そうなのかもしれない。
でも、どんなにテーマが鋭くても、どんなにセリフが巧みでも、主人公たちを応援したいと思えなければ、物語に乗り切ることはできない。
才能のきらめきは随所に感じるのに、物語のエンジンがかかりきらないまま終わってしまったって感じがする。
そんな印象の、非常にもったいない作品だった。
Netflixシリーズ『イカれてる⁈』各項目別10点満点評価とレビュー
😱 Netflixドラマ『イカれてる⁈』【ネタバレ全開】最終話の結末と、登場人物が下した決断
破局、そして愛犬の死
物語の終盤、フェリックスは3年間断っていた薬物に手を出し、他の女性と関係を持ってしまいます。
彼はその事実をジェシカに告白し、ジェシカは彼にアパートから出ていくよう告げ、二人の関係は一度終わります。
しかし、その直後、ジェシカの愛犬アストリッドの容態が急変し、息を引き取ってしまいます。
転機:仕事での成功と、敵との和解
私生活でどん底に突き落とされたジェシカですが、仕事面では大きな転機が訪れます。
空中分解しかけたCM撮影の現場で、彼女は監督として見事に現場をまとめ上げ、成功を収めます。
さらに、彼女が敵視していた元カレの婚約者ウェンディと対面。
そこで、元カレが二股をかけていたという事実を知り、二人は共通のトラウマを持つ「被害者」として和解し、連帯します。
クライマックス:抗議デモ、逮捕、そしてプロポーズ
ウェンディに背中を押されたジェシカは、環境保護の抗議デモに参加しているフェリックスの元へ向かいます。
人混みの中で再会した二人は、互いの非を認め、和解の言葉を交わします。
しかしその直後、ジェシカはデモの参加者として警察に逮捕されてしまいます。
パトカーに連行される混乱の中、フェリックスは彼女に向かって「結婚しないか?」とプロポーズ。
物語は、親しい友人や家族だけが集う、二人の小さな結婚式のシーンで幕を閉じます。
✍️ Netflixドラマ『イカれてる⁈』【深掘り考察】なぜこの映画は「惜しい」で終わってしまったのか?
深掘り考察①:致命的な「キャラクターの崩壊」
僕がこの物語にどうしても乗り切れなかった最大の理由は、主人公たちの行動原理が、物語の途中で完全に崩壊してしまっている点にあると思います。
バディ映画やラブストーリーの魂は、キャラクターの魅力と、その一貫性にある。
しかし本作では、あれだけ臆病で心を閉ざしていたフェリックスが、何の前触れもなく衝動的にプロポーズする。
逆に、感情のままに行動していたはずのジェシカが、ウェンディとの一度の会話だけで、達観したかのように彼を受け入れてしまう。
これは「成長」じゃない。
脚本の都合で、キャラクターが無理やり「あるべき結論」へと動かされているだけに感じてしまった。
だから、僕はキャラクターに感情移入するハシゴを外されてしまった。
「え、君、そんなキャラだったっけ?」という混乱が、感動を上回ってしまったせいで、この物語に乗り切れなかった…。
深掘り考察②:「アンチ・ラブコメ」の失敗
この作品が、伝統的なラブコメの「お約束」を破壊しようとした、野心的な「アンチ・ラブコメ」であることは間違いない。
でも、その試みは成功したとは言えないと僕は思う。
なぜなら、古い幻想を破壊した後に、新しいリアルな愛の形を提示することに失敗しているからです。
「キラキラした恋愛なんてない」と突き放すのはいい。
でも、その代わりに提示されたのが、「よくわからないけど、勢いで逮捕されて、勢いで結婚しちゃいました」という、あまりに説得力のない結末では、ただ戸惑うだけ…。
破壊の後に、創造がなければ、そこには何も残らないと思う。
深掘り考察③:「トラウマ」の安易な利用
ジェシカとフェリックスが、それぞれ壮絶なトラウマを抱えていることが、物語の後半で明らかになる。
精神的虐待と、性的虐待。
これらは、非常にデリケートで、重いテーマだ。
しかし、本作では、そのトラウマが、キャラクターの奇妙な行動を正当化するための、安易な「言い訳」として使われているように感じてしまった。
トラウマと向き合い、乗り越える過程を丁寧に描くのではなく、「この人たちはトラウマがあるから、何をしても仕方ないよね」と、物語が開き直ってしまっている。
これは、扱うテーマに対する不誠実さだと感じずにはいられなかった。
深掘り考察④:なぜ「化学反応」が起きなかったのか?
僕が最後まで二人の間に「ケミストリー」を感じられなかった理由。
それは、彼らが本当の意味で「影響し合って」いないからだとも思った。
最高のバディものやラブストーリーは、正反対の二人が、互いの存在によって少しずつ変化していく過程を描く。
でも、本作の二人は、お互いの影響で変わったんじゃない。
脚本の都合で、ある日突然「別人」になってしまっただけ。
だから、そこには反発も、理解も、そして愛も生まれないし、ただ、ちぐはぐな二人が、同じ画面に映っているだけ…。
📝 Netflixドラマ『イカれてる⁈』まとめ:ラブコメファンこそ、覚悟して観るべき問題作!
さて、ここまでかなり辛口なレビューを書いてきたけど、最後に一つ、みんなに伝えておきたいことがあります。
この記事の配信前情報で、僕は大きな期待を込めて、この作品を「事件だ!」と紹介しました。
その期待が大きすぎた故に、今回のレビューは、僕個人の強い「がっかり感」が反映された、厳しい内容になってしまったかもしれません。
もし、僕の最初の記事を読んで期待して観てくれたのに、不快な思いをさせてしまった人がいたら、本当にごめんなさい。
もちろん、これはあくまで僕個人の感想です。
海外の批評家の中には絶賛している人もいるし、この「厄介さ」こそが最高だと感じる人も、きっとたくさんいるはず。
だから、僕の最終的な結論はこうです。
分かりやすいラブコメを期待して観ると、たぶん僕と同じように失望する。
でも、『GIRLS』のレナ・ダナムが仕掛ける、一筋縄ではいかない「人間関係の実験」を観たい、という覚悟があるなら、これは忘れられない一本になるかもしれない。
僕の評価はこうだったけど、みんなはどう感じたかな?
ぜひ、コメントで君の意見を聞かせてくれると嬉しいです。
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