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【映画『母性』ネタバレ解説】食い違う母娘の記憶。本当の「怪物」は誰だったのか?徹底考察!

映画

はじめに:湊かなえワールドへようこそ

「イヤミス(後味の悪いミステリー)の女王」湊かなえ。
彼女が「これが書けたら作家を辞めてもいい」とまで語った、まさにキャリアの集大成ともいえる一作が、この『母性』だ。

YOSHIKI
YOSHIKI

この記事は、言うまでもなく、この記事は核心に触れる完全なネタバレ解説。
だから、まだ映画を観ていない、という人は、必ず鑑賞後にまたここへ戻ってきてほしい。
…さて、覚悟はいいかい?

映画『母性』の作品情報

YOSHIKI
YOSHIKI

まずは、この美しくもおぞましい物語を紡いだ、クリエイターたちの情報から。

項目詳細
作品名母性 (MOTHERHOOD)
公開年2022年
監督廣木隆一
原作湊かなえ
主なキャスト戸田恵梨香、永野芽郁、大地真央、高畑淳子
上映時間115分

映画『母性』【ネタバレなし】感想と10段階評価

映画『母性』全体的な感想(ネタバレなし)

はっきり言って、スッキリする映画ではない
観終わった後、心の奥にじっとりとしたおりが溜まるような、ずっしり重い手応えのある作品だ。

でも、ミステリー好き、特に人間の心理の暗部を覗くのが好きな人なら、この感覚がたまらないはず。
「なんとも言えないモヤモヤした気持ち悪さ」こそが、本作の最大の魅力であり、一種の中毒性を持っている。

美しい母娘の愛の物語を期待して観ると、とんでもない裏切りに遭うだろう。
これは、愛という名の「呪い」の物語なのだから。

映画『母性』10段階評価レビュー

評価項目評価 (10点)レビュー
ストーリー9.5さすが湊かなえ。食い違う記憶の構成が見事すぎる。終盤の畳み掛けは圧巻の一言。
映像7派手さはないが、登場人物たちの心理を映し出すような、静かで抑制の効いた映像が美しい。
キャスト10戸田恵梨香と永野芽郁の演技合戦。これを見るだけでも価値がある。特に戸田恵梨香の「壊れた母」の表現は鳥肌モノ。
音楽7.5感情を煽りすぎず、不穏な空気を静かに醸成する音楽が効果的。
トラウマ度8.5物理的な怖さはない。だが、じわじわとあなたの「親子観」を侵食してくる。ある意味、ホラーより怖い。

【ネタバレなし】映画『母性』のあらすじ

ある日、女子高生が自宅の庭で倒れているのが発見される。
事故か、自殺か、あるいは…。

「愛能う限り、大切に育ててきた娘がこんなことになるなんて…」と涙ながらに語る母・ルミ子。
しかし、その言葉を聞く娘・清佳の瞳は、どこか冷めている。

物語は、この事件の謎を追う形で、母の手記と娘の回想という、二つの食い違う視点から過去を紐解いていく。
同じ出来事を語っているはずなのに、二人の「真実」は、なぜこうも違うのか。
観客は、母性に狂わされた母と娘、その心の迷宮に迷い込むことになる。

【超重要ネタバレ】『母性』の結末と物語の全貌

【警告】
ここから先、あなたの信じていた物語が、反転します。
まだ視聴していない方は、閲覧を注意して下さい。

この物語の真の悲劇は、女子高生の転落事件そのものではない。
その根源にある、世代を超えて連鎖する「愛という名の呪い」だ。

最終的に明らかになるのは、娘・清佳の転落が、自殺未遂であったこと。
そして、その引き金となったのが、祖母(ルミ子の実母)の死の真相を知ってしまったからだ。

11年前の台風の夜。
家が倒壊し、祖母と幼い清佳がタンスの下敷きになる。
その時、母ルミ子は、娘ではなく、自分の母親を先に助けようとした
それを見た祖母は、ルミ子に「正しい選択」をさせるため、自ら舌を噛み切り、娘を助けるよう促して自害したのだ。

この衝撃の事実を知った清佳は、「母がずっと苦しんでいたのは、自分のせいだ」と絶望し、自殺を図る。
幸いにも一命を取り留めた彼女を、ルミ子は初めて「さやか」と名前で呼び、抱きしめる。
ここに、初めてルミ子の中に本物の「母性」が芽生えたかのように見えた。

しかし、物語はそう甘くない。
ラスト、妊娠した清佳にルミ子がかけた言葉は、「私たちの命を未来につなげてくれてありがとう」。
この「私たち」という言葉は、ルミ子と、亡き彼女の母親を指している。
結局、ルミ子の「母性」は、最後まで実母の影に強く縛られたままだったのだ。

映画『母性』の主要な考察ポイント

深掘り考察①:「母の手記」と「娘の回想」食い違う記憶の謎

この映画の構成、ミステリー好きにはたまらないですよね!
同じ出来事のはずなのに、母と娘、どちらの視点で語られるかによって、全く違う物語に見える。
いわゆる「羅生門エフェクト」です。

例えば、清佳が自殺を図った後、ルミ子の視点では「娘を優しく抱きしめている」。
しかし、清佳の視点では「母に首を締められている」。

なぜ、こんな食い違いが生まれるのか?
それは、人間が、自分に都合の良い「物語」を記憶として再構築する生き物だからだ。
母は「私は良い母だった」と信じたい。
娘は「私は母に愛されなかった」という事実を訴えたい。
それぞれの主観が、過去の出来事を歪めていく。

「真実はいつも一つ!」なんて、名探偵のセリフでしかない。
この映画は、親子であっても真実は共有できないという、残酷で、しかしありふれた現実を突きつけてくるのだ。

深掘り考察②:「母性」という名の呪い。毒親か、悲劇の母か

さて、母・ルミ子は、単なる「毒親」だったのだろうか?
僕は、彼女もまた「被害者」であり、「悲劇の母」だったと思う。

彼女の行動原理は、ただ一つ。
「自分の母親に褒められたい、愛されたい」
そのために、娘を完璧な「孫」として育て上げ、母親に差し出す。
彼女は、娘を個別の人間としてではなく、母親からの愛を得るための「道具」としてしか見ていなかった節がある。
だから、娘の名前すらまともに呼ばないのだ。

嵐の夜、「子どもなんてまた産めばいい」という彼女のセリフは、まさにその象徴。
しかし、彼女を一方的に責められるだろうか?
「母性とはこういうものだ」という歪んだ価値観を、彼女に植え付けたのは、他ならぬ彼女自身の母親なのだから。
これは、歪んだ愛情の連鎖が生んだ、一つの悲劇なのである。

深掘り考察③:タイトル『母性』に込められた皮肉と真の意味

この映画のタイトル『母性』は、極めて痛烈な皮肉だ。

僕らがイメージする「母性」とは、無償の愛であり、自己犠牲の精神だろう。
しかし、この映画で描かれる「母性」は、見返りを求め、条件付きで、どこまでも利己的だ。
まさに、「母の愛が、私を壊した」というキャッチコピーそのもの。

だが、物語は絶望だけでは終わらない。
ラスト、清佳が下す決意に、僕はかすかな光を見る。

「わたしは子どもに、わたしが母に望んでいたことをしてやりたい。愛して、愛して、愛して、わたしのすべてを捧げるつもりだ」

これは、母から与えられなかった愛を、今度は自分が与える側になるという、呪いの連鎖を断ち切るための、力強い宣誓布告だ。
彼女は、自らの意思で、本当の「母性」を獲得しようとしている。
この映画は、タイトルに込めた強烈な皮肉の先に、このささやかな希望を提示してくれるのだ。

映画『母性』まとめ:あなたの「母性」のイメージを破壊する傑作

『母性』は、観終わった後、あなたの心に深く、重く、そしてじっとりと居座り続けるだろう。

ミステリーとしての面白さはもちろん、観る者自身の親子関係や、愛情の定義についてまで、否が応でも考えさせられる。

観終わった後、あなたは自分の母親(あるいは子供)のことを、少しだけ違う目で見てしまうかもしれない。
それこそが、湊かなえ作品が持つ恐ろしさであり、同時に抗いがたい魅力なのだ。

これは、心して観るべき、あなたの価値観を破壊する傑作だと思う

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